日本語の辞書が欲しいと思う、今日このごろ
少し前から、あるサイトで日本のマンガの英訳を手伝っている。日本語の分かるネイティブ英語話者がいるので、最終的な英作文は彼らに任せればよい。私は、もっぱらオリジナルのマンガにある日本語の文章が言わんとしていることについて怪しげな英語で説明をしたり、熟語(たとえば「冥利に尽きる」のような表現)について意味や使い道を解説したりしている。
日本語の説明をしていて特に困るのが、ありふれた助詞の説明で、手元にある広辞苑なんかにはロクな情報がない。広辞苑は、このたぐいの言葉については、万葉集あたりから例文を持ってきている。1300年以上も前の例文を使って外国人に今の日本語を説明するというのは、少なくとも私には困難な仕事だ(例文の意味が、私に分からないこともままある)。
実を言えば、向こうがどれくらい詳細な日本語の解説を求めているのか、私はよく分かっていない。だが、彼らが作った訳文の中に誤訳を見つけたとき、頭ごなしに訂正するのではなく、「日本語の原文はこういう意味だ。文法的にこう解釈するのが正しい」と説明をするほうが好ましいと思う。それに、私自身、きちんとした英文を書けるわけではないので、英語として適切かどうか分からない訳文をいきなり出すよりは、内容の説明をして、作文そのものは彼らに任せたい。
英語の場合、英語を母語としない人のために特別に作られた、易しい英語で意味を説明していて文法事項の説明などについても特別な教育的配慮がなされている学習用の辞書がいくつも存在する。しかし、以前、『外国人のための日本語の辞書がない』にも書いたように、日本語の場合には、そのようなものは皆無といってよい。
『オックスフォード現代英英辞典』や『コウビルド英英辞典』に相当するような、日本語でかかれた日本語学習者用の辞書が欲しいと思う。
ひとまず、日本語教師の間で評判がいいという『明鏡国語辞典』を買ってみることにした。これは普通の日本人向けの辞書だが、日本語の文法の基礎的な事項に関する説明が非常に丁寧にまとめられているそうだ。
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ヤフーでググッてやってきました。
先日アメリカを旅行して偶然コミックを見つけおそらく誰か日本人が訳されてるのだろうと思い、たどり着きました。
私が買ったのは藍青とエバとバスタードでしたが、素晴らしい翻訳内容に英語の教科書にできるのではないかと思ったぐらいです。
これからもますますのご活躍をお祈りしております。
投稿: アーラ | 2005.05.28 09:56
コメントありがとうございます。
さて、コメントはとても嬉しいのですが、私が手伝っている英訳は、アーラさんが挙げていらっしゃるような大手出版社の商品ではありませんし、私自身のやっていることも、ちゃんとした翻訳家のレベルには程遠いもので・・・ アーラさんから声援を受けるべき人はもっと他にいらっしゃると思います。
お買いになった本の表紙をめくった最初のページに、たぶん、セリフの翻訳や英語版の編集をした人の名前が書いてあると思います。
(マンガのセリフは、小説など以上に口語的、非文法的なものになるので、外国語に翻訳する場合は、やはりその言語を母語とする人たちが翻訳する場合が多いですね。)
投稿: htsuji | 2005.05.31 22:12