デノミの「デ」
英語の勉強をやりなおし始めて間もないころに、日本語では既に外来語として定着してしまっている「デノミ」「デノミネーション」は、本来の英語の意味とは異なる誤用であった、という指摘を複数の英語の本で読んで、何とも釈然としない気持ちになった。
確かに、英和辞典で denomination を引けば、この単語に「名前」「通貨の単位」などの意味はあっても、通貨単位の変更というような意味は全くなく、もしそういう意味の英単語が欲しいなら、この前に re- を追加して得られる redenomination という言葉を使う必要があると書いてある。
この、「denomination という英語には、通貨の単位を切り下げると意味などない」という事実を指摘された人が、私と同様、びっくりしたり気分を害したりするという例は、どうやら他にもあるらしく、ある英語の先生などは、ラジオの教育番組でそう指摘したときに、番組の内容が間違っていると言う抗議の電話さえ受け取ったそうだ。
私の場合、不幸なことに、de- は下げるという意味だという一般的な知識とともに、日本語のデノミネーションという言葉が10年も20年もかけて頭に染み付いているので、今になって『denomination の de- は、この単語においては「下げる」という意味ではない。「完全に」という強調のための言葉だ』と、いう正しい知識を得ても釈然とせず、何とも気持ちが悪いままだった。中途半端な知識や先入観があると、正しい理解を妨げてしまうという典型例である。
これは心情的な問題なので理屈ではどうにもできなかったのだが、最近になって、デモンストレーション demonstration の de- も、やはり、同じように強調の意味で使われている例だと知って、やっと納得できるようになった。なるほど。デモンストレーションの「デ」だと言われれば、強調のために de- が使われることもあると言われても全く違和感はない。数年間、ずっと気持ち悪く感じていた英語の denomination と、やっと自然に接することができるようになった。
身に染み付いた先入観は克服するのが厄介だが、実は、ちょっとしたきっかけで通り抜けることができるのかも知れない。もっとも、問題は、どうやってその「きっかけ」を見つけるかであるのだが。
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