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2004.09.01

合理的な行動の不合理な結末

少し前のことだが、本棚の整理をし不要な本を処分しようとしたときのこと、捨てるのももったいないと思い、汗をかきかき古本屋まで持っていった。が、何となく店主の態度が気に食わない。買い叩かれたわけではなかったが、妙に横柄な感じがして気分が悪い。そこで、売るのは中止し、再び汗をかきかき自宅まで持って帰る。そして、翌日燃えるゴミに出す。我ながらバカなことをしている。

気に食わないやつが利益を得るくらいなら、自分が得られるはずの利益を捨ててでもそれを阻止しようという、不合理な行動を取るのはなぜだろうか? そんなことをしても自分には何の特にもならないのに? 単純に言えば、取り引きによって得られる満足度とは別の、より優先度の高い不満が心の中に沸き起こっていて、金銭によって得られたはずの満足度を打ち消しているわけである。

得られる金額が大きければ、少々不快な思いをしても取り引きに応じるかも知れないし、はした金ならサヨナラである。不快感にも値段があるのだ。今回はたまたま、本の売値より不快感の買値のほうが高かった。

私物の古本をどう処分するかという、個人的で些細な問題であれば、取り引きの成功による利益も破談による損失も自分自身が負担するだけのことである。重い本を抱えて自宅と古本屋を往復したのは私であり、他人に迷惑をかけたわけでもない。店主を数分間煩わせたかも知れないが、まあそれくらいは大目に見てもらおう。

一方、もしこれが、会社の内部、あるいは会社間での仕事にまつわる取り引きの場合はどうだろうか。仕事上の取り引きに私情を交えるのはもちろんよくないことだが、実際に変な行動には至らなかったとしても、「あいつに手柄を立てさせるくらいなら、オレは自分の成績を落としてでも・・・」という感情に、本当に一度もなったことはないという会社員は、おそらく非常に少ないと思う。

ここで恐ろしいのは、取り引き成立による利益は会社のものであり、一方、取り引きの途中に味わう(かも知れない)不快感は担当者個人が受け持つことになるという点である。会社に1億円の利益をもたらす取り引きでも、担当者個人がマイナス100万円相当の精神的ダメージをうけるとしたら、その人は取り引きを進めるだろうか?

自分が1億円もらえるというなら、100万円の不快感は埋め合わせることができるに違いない。また、そんな景気のいい話じゃないとしても、仕事をサボった結果として解雇されようものなら金銭的精神的被害は100万円どころでは収まらないから、おそらく、100万円の不快感を味わっていても仕事は進めるのが普通だ。雇われる身はつらい(もっとも、ものには限度があるので、度重なれば辞表を叩きつけることになるだろう)。

しかし・・・ もし、解雇される心配はないとしたら? 仕事の流れを止めても自分の身は安全だとしたら?

自分の立場が安全であるなら、ほんの些細な個人的満足感を満たすために、あるいは不快感を避けるために、社員の行動が左右され、その結果会社に壊滅的な損害が発生することは十分ありうる。会社が損害を受けても本人の懐は痛まないので、自営の商売人同士であれば当然働くはずの打算による自己抑制が働かない。法律で縛られている公務員より、民間企業のほうが、ひとたび暴走したときの壊れようはひどいかも知れない。

社外の第三者からみれば、会社はひとかたまりの存在なので、これは内部矛盾を抱えた愚かで不合理な行動である。しかし、会社の内部にいる当事者にとっては、個人の利益を最大化する合理的な行動である(少なくとも短期的には合理である)。与えられた社内環境に適応し各人が合理的に行動した結果として、プロジェクトが壊滅する。不合理でも何でもない。

会社のプロジェクトが天変地異によって外から潰されることは少ない。潰れるべき要因がプロジェクトの置かれている環境に内在しているとき、自動的に、滑らかに、そして留まることなく自滅メカニズムが動作し、プロジェクトは崩壊する。メカ二ズムの挙動は極めて合理的であり、崩壊の行く末は予想可能である。みんな、このままでは破滅することを感じているが、どうすることもできない。

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