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2004.09.04

Jane Eyre その2

少し前に Jane Eyre について書いたが、先日図書館で、教材用に本の内容を要約したものを見つけたので借りてみた。洋販出版からラダーシリーズという名前で出ている英語教材の一つらしい。このシリーズの本は、使われている単語の数によって 1000~5000語の5段階に分類されている。ハシゴを上るように順に難しい本に取り掛かることができるということのようだ。

ただし、この本の注意書きによると、1000語で書かれているという本でも、1000語に含まれている単語から作られる合成語や派生語は使っているそうだ。何となく Basic English を思い出させるルールだが、派生語の作るための接頭語と接尾語の種類はずっと多い。同レベルに分類されていても、使われている単語の範囲や難易度は本によってかなり違うかも知れない。

単語のランク付けに使われているのは、The New Horizon Ladder Dictionary という学習用の辞書で、amazon.com にある内容見本を見ると、単語の見出しの横に1から5までの数字がつけられていて、無印のものも含め6つの段階が示されていた。

このラダーシリーズの本が、最初から日本人向けに書かれたものなのか、それとも、すでにあった教材を海外から買ってきて5段階に分類したものなのかは分からないが、いずれにせよ、出版社はひとつ重要な方針を定めているらしい。それは、『原作の中で起きていることをカットしたり、話を変えたりはしない』ということだ。

この Retold 版 Jane Eyre を一通り読んでみてちょっと驚いたのだが、確かに、わずか120ページの中で原作中にあるほとんど全ての事件が確かに起こっていた。本のページ数も1ページあたりの語数も減っているので、全体として原作の8分の1くらいの語数になっているが、ストーリーの変更は何もない。細かい風景の描写はカットし、登場人物たちの感情と性格を表す会話部分はあまり短くしないというような工夫があり、機械的に短くしているわけではない。

もっとも、作中で起きた事件をどれも捨てずに残している、という意味では、機械的、形式的な要約である。さすがに8分の1に短縮してしまうと、雰囲気は変わる。原作の方ではかなり時間をかけて進行していた事件が次々と起こるし、登場人物の言葉は直接的だ。

もともと主人公のジェーンは表立って感情を表さないのだが、まれにしかないはずの感情をあらわにする場面はストーリー上の重要なポイントなので優先的に残されている。このため、他人への自己主張がオリジナルより目立つ。原作にある宗教的な色彩もおもに登場人物たちの会話の部分に現れていたので、会話を優先した要約の結果、宗教色が強調されているような気がしないでもない。また、ロチェスターのジェーンに対する惚れ込みようは、エルフうんぬんといった少々現実離れしたセリフに現れていると思うので、その辺のセリフが全ての場面から除かれているのは残念だ。

細かい不満としては、誤植がたまにあるということ。58ページの最初の行にある Ms Fairfax は、Ms Ingram の間違いだ。善人役と悪人役の名前を取り違えては困る。読んでいてびっくりし、確認のため原作を本棚に取りに行ったほどである。今売られているものでは修正されているといいのだが。重大なミスは、たぶんここだけだと思う。

ミスはともかく、何を優先し何を削るかという点については、これだけ短くするならどうやっても不満は残るだろう。書き直しをした Diane Gruenstein という人は、いい要約をしていると思う。願わくば、この本を読んでオリジナルを読んでみたいと思う人が現れんことを。

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