NEGIMA その2
先日紀伊国屋書店で買った NEGIMA が、いろいろな点で面白かったので、2巻めを日本のアマゾン・ドットコムから取り寄せてみた。偶然だが、今月発売されたばかりの新刊らしい。すでに、3巻から5巻までの発売スケジュールも確定しているようだ。
読んでいてすぐに気がついたのだが、擬音の訳し方が1巻目とは少し違う。2巻のほうが、いくぶん説明的な感じがする。例えば、登場人物が驚いている場面。日本語では単に顔が赤くなっていることを意味する「カァ」という文字が書いてあるのに対し、その英訳は "Jaw drop" になっている。また、パソコンの電源を入れた場面の起動音「ジャーン」には、"Windows theme" と書いてあったりした。なぜかなと思ったら、訳者が1巻めとは違う。
英語の jaw drop(jaw drop open ともいう)は、非常に驚いているという意味だ。おそらく、びっくりして口をぽかんとあけている様子からきた熟語だろう。昔見たアメリカのアニメ、たとえばトムとジェリーなどでは、登場人物たちが仰天するたびに、しばしば記号的映像表現として下あごが床まで落っこちていた。熟語の表現を文字通りの絵にしてみせるというのは、日本のマンガにもよくあると思う。
ところで、起動音の「ジャーン」は、マッキントッシュではないのだろうか? そう思ってマンガのコマをじっくり観察してみると、やはりマックを起動するときに表示される小さな顔マークが描き込んである。これは実にケシカラン誤訳だ。だいたい、描かれているキーボードには押しボタン式の電源スイッチがあるから・・・ ああ、いやいや、こんなことを攻撃するとバカだと思われるのでやめておく。(それに、この回の扉絵のほうは、Windows のデスクトップ画面だった。作者も適当に描いているのである。)
さて、このパソコンが出てくる回に、ちょっと面白い表現があった。女の子が自分の写真をデジタルカメラで撮った後に、"Then I photoshop my skin. Get rid of pimples and such." と言っている。 ここで動詞として使われている photoshop とは、パソコン用の画像処理ソフトの名称だ。その名の通り、昔は写真屋さんがフィルムや印画紙に対してやっていた写真の加筆修整を、コンピュータの画面上で電子的にやるためのソフトである。というわけで、彼女は「肌をフォトショップで修正する」わけである。
なお、Photoshop の開発販売元である Adobe Systems のガイドラインのページには、「商標は一般動詞じゃないぞ」「所有格(Photoshop's)もだめ」などのような注意書きがある。しかし、検索エンジンで photoshopped や photoshopping という単語を探すと、お気の毒なことにいくらでも見つかる。
英語は何でも動詞にする。
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