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2004.08.02

日本(または海外)への進出

戦後の日本経済の復興について語るとき、通産省の産業保護政策のことを避けて通ることはできない。海外の有力企業の日本進出に際して、通産省はしばしば、それらの外国企業が日本に100%子会社を作ることを認めず、既にある日本企業との合弁によって進出することを強く求めた。この政策によって、日本の産業は十分な時間をかせぎつつ外国の技術を吸収することができたと言われている。

その事実を否定するつもりはない。ただ、この日本企業との合弁を求めるという通産省の保護政策は、通産省の本来の意図はともかく、結果として、日本企業のみならず日本に進出する外国企業に対しても有形無形の保護と安定をもたらしたように思う。なによりも、まず、海外企業が日本進出するときのリスクをかなり低減していたはずだ。

現地の習慣がよく分かっておらず、現時でビジネスを円滑に進めるためのノウハウがないなら、100%子会社を作って本社からコントロールするのは危険である。コントロールに成功すれば、すなわち、本社の思い通りに子会社を操ることができたとすれば、その子会社は、現時の顧客やパートナーに対して現地でのビジネス慣習を無視した傲慢で無責任な態度をとることになる。それでビジネスが失敗しても何の不思議もない。かといって、本社が子会社のコントロールに失敗すれば、それもまた致命的な失敗である。放漫経営で子会社はつぶれるであろう。どう転んでもうまくない。これは、外国企業が日本に進出する場合の話に限らない。日本企業が外国に出て行く場合にも同じことが言える。

多くの場合、実際には、完全なコントロールが可能になることもなければ完全に野放図な状態に陥ることもない。程度の差はあるにせよ、どこか中庸に落ち着くはずだ。そして、それぞれの状態がもたらす長所がそれぞれの短所を補いあうことができた場合に、現地でのビジネスは成功する(逆に、短所のみが表に出て事業が失敗することもあるが)。

コントロールをどこまで緩めるかについては、あまり心配しなくてよいと思う。「これこれは現地の裁量に任せる。」と、明示的に権限の委譲をしていなくても、現地スタッフは本社の裏をかくものである。そして、そういう『生意気な連中』が、この種のやっかいな問題を解決する。

『生意気な連中』の力を平和利用するため最も必要なものは、本社の現地に対する敬意だと、私は思う。それがなければ、『生意気な連中』は、ただ本社をペテンにかけるだけの策士になる。本社が現地を軽蔑しているとき、それが現地にとって「どうしようもないこと」であるなら、現地としては本社にいっぱい食わせて金をせしめるくらいしか、やることはない。それ以外にどんな生き方があるというのだ。本社の目を盗んでどんなに立派な成果をあげても、本社から敬意を持って評価されることはない。自分の身を危険にさらしてまで事業に貢献しようという馬鹿はいない。

経済的な力関係として、本社は海外の支社に対して絶対的な生殺与奪権を持つ。そのため、本社がどんなに愚かであっても、支社は本社に従うか本社を騙すかのどちらかしか選べない。本社が現地を軽蔑しているとき、支社が本社を教育し正しい方向に導くなどということは、絶対にありえない。それが可能なのは、最初から本社が現地に対して敬意を持って耳を傾ける用意がある場合だけである。合弁の場合でも生殺与奪権がなくなるわけではないが、支配力はかなり弱まる。また、現地にある合弁相手の企業に対しても、それなりの配慮をしないわけにいかない。

もちろん、合弁だから成功するとか100%子会社だから失敗するなどと、運命があらかじめ決まっているわけでは決してない。合弁相手に問題があって、こんなことなら100%子会社にしておけばよかったということもあるだろう。しかし、100%子会社という仕組みにも事業失敗の可能性を高める要因があることを、本社は忘れてはならないと思う。

逆説的だが、自由にコントロールできるからこそ事業が失敗してしまうこともある。なぜなら、コントローラーが正しいとは限らないのだから。そして、多かれ少なかれ間違いは必ずどこかにひそんでいる。コントローラー側が間違っている可能性を自覚するためには、現地に対する敬意が必要である。それなくして、海外での事業が成功することはない。馬鹿げた間違いはもうたくさんである。

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