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2004.07.17

『どうしようもないこと』との付き合い方

7月16日に書いた『どうしようもないことは、どうしようもない』に対して、「それでも何とかしなければいけない時はどうするの?」という質問を受けた。

答:どうしようもない

何はともあれ、最低限「これは、<現時点では>どうしようもないのだ」という事実は事実として受け入れなければならない。事実を正しく認識することこそが、問題と付き合うための第一歩なのだから。

もちろん、現在どうしようもないからといって、未来永劫に渡ってどうしようもないとは限らない。しかし、アナタが生きている間にどうにかなることなのか、ワタシが在職中にどうにかなることなのか、という点を十分に検討する必要がある。また、事実は時間とともに変化するので、現状を観察し続ける必要もある。

「あのクソ社長は再教育が不可能だから、死ぬか退陣するまではどうしようもない」ということなら、それまで待つしかない。まさか、16日に取り上げた本のストーリーのように毒を盛るわけにはいかないのだから。長年耐え忍んだ末に、アナタがおかれている立場が変われば、例えば、投資家の支持を得てアナタが合法的に社長を解任できる立場になったのであれば、社長の首を切ればいい。しかし、アナタが下っ端である限りは、社長を解任することも再教育することも不可能である。これを動かしがたい事実として認識しない限り、アナタは不幸になる。

事実を認識した上で、次の4通りの方針が考えられると思う。すなわち、事実を---

(1)受け入れて、無気力になる
(2)受け入れて、自分も病んだ政治家になる
(3)受け入れて、病んだ政治家と取り引きする
(4)受け入れず、逃走する

これ以外の選択肢は、たぶんない。「(5)受け入れず、あくまでも抗戦する」は、ただの自滅である。なぜなら、その道では、上に挙げた(1)から(3)を選択した多数の同僚たちとも戦うことになるからだ。アナタは、病んだ政治家に対してだけではなく、隣の席にいるアナタの同僚たちをも敵にまわし危害を加えることになる。そうならざるを得ない。そして、アナタは何の成果をあげることもなく、ひどい苦痛を味わった末に職場を追われるだけである。そんな策を選ぶくらいなら、「(1)無気力」か、または、新天地を求める準備を整えた上で「(4)逃走」を選ぶほうがマシである。(5)を選べば、どうせ職場を追われるのだから。

教科書的な解答はおそらく「(3)取り引き」であろう。あんなクズどもとは取り引きしたくない? よろしい、では(1)(2)(4)のどれかをお選び頂こう。他に選択肢はない。

大抵の組織人の行動は、多かれ少なかれ(1)から(3)が混ざったものだと思う。どのような割合で混ざっているかは、もちろん人によって異なる。頭の中が(2)だけで占められると、最近懲戒解雇されたどこかの自動車メーカーの部長級社員のように、重大な書類を偽造し会社に壊滅的なダメージを与えることになるが、しかし、この人物は、そもそも会社を取り巻く状況が激変している事実を理解していかなった。

もし事実を理解していたのなら、どんなに利己的で病んだ政治家であろうとも、自分は懲戒解雇され会社には壊滅的な損害をもたらすようなことをやったりするはずはない。1番目と2番目の選択肢の恐ろしさは、そんなことをしていると、やがて事実を理解する能力を失うという点にある。

実のところ、ある人間のある行為が善意に由来するものなのか私利私欲から発せられたものなのは、ほとんどの場合、意味のない瑣末なことである。あの社員が会社のためを思い善意から報告書を偽造したのだとしても、そんなことはどうでもよい。世間を欺いたという事実のみが評価される。

同様なことは、「(5)受け入れず、あくまでも抗戦する」にも当てはまる。たとえ正義感からであろうとも、ただ同僚を傷つけるだけで会社の改革には何一つ寄与しないようなことをやって、一体何になるというのだ? そんなものは改革ではない。改革ごっこである。改革をしたいなら「(3)受け入れて、病んだ政治家と取り引きする」を選ぶしかない。どんなに不愉快な相手であっても、お互いの立場と力関係を理解したうえで商談相手として取り引きしなければならない。

もちろん、力関係が変わってしまえば、態度も変えてよい。大切なことは、互いの力関係に限らず、会社全体、世の中のことも含め、とにかく事実を観察し、不愉快であろうとも事実は事実として受け入れることである。不断の観察と分析のみが、アナタが組織の中で生き延びる力をもたらすのだ。アナタの思想信条がどうであろうとも、事実のほうが強い。

私は、そういうことに気がつくことなく、長年にわたって複数の会社を渡り歩いてきた。そして愚かな失敗を繰り返してきた。過去を嘆いても今さらどうしようもないが、授業料はかなり高くついているように思う。なおかつ、授業はまだ終わっていない。

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